国内で流通している漢方薬の分類

日本では大きく分類して5種類の漢方薬*1が流通しています。

  1. 医療用*2漢方エキス製剤:エキス製剤とは漢方を構成する生薬(植物)のエキスを取り出して顆粒状にしたものです。これは西洋薬と同じように医師が健康保険で処方します。国内でもっとも流通量の多い形態の漢方薬です。8割以上のシェアをツムラが占めているため、俗に「ツムラの○番」*3と呼ばれることがあります。
  2. 医療用煎じ薬:これも西洋薬と同じように医師が、原則として健康保険で処方します(自費診療のみを行う漢方医もいます)。患者はティーバッグ入りの生薬を薬として渡されます。そして、自宅で一日分の漢方薬を煎じます。煎じる時間はおよそ30分です。医師が処方する漢方薬の9割は医療用漢方エキス製剤です。煎じ薬を出す医者は非常に少ないのです。
  3. 一般用*4漢方エキス製剤カネボウ、コタロー、ツムラ、松浦、ゼファーマなどのメーカーが販売しています。これは薬局薬店で購入することができます。漢方薬局に行けば確実に売っていますが、ドラッグストア等でも一部の漢方薬が売られています。顆粒剤、散剤、錠剤、ドリンク剤の4タイプが流通しています。健康保険が使えないので、医師に処方してもらう場合よりもコストがかかりますが、気軽に漢方を入手することができるので便利です。
  4. 一般用煎じ薬:日本には漢方を勉強している医師は少なく、薬剤師が漢方薬局を経営していることが多いのです。東京や大阪であれば、どこの町にも漢方薬局が必ずあると思います。生薬卸業者としては栃本天海堂や内田和漢薬などがあります。1週間分で2000円〜5000円ほどかかりますが、健康保険の枠に縛られないので、患者にほんとうに適した漢方を得ることができます。ただし、勉強不足の漢方薬局も非常に多いので必ずしもオススメできません。
  5. 一般用中成薬:これは漢方薬局やドラッグストアで購入することができる薬で、錠剤、顆粒剤、カプセル剤など様々な剤形があります。中成薬とは、中国から輸入した漢方エキス製剤のことです。中成薬を薦める人も多いのですが、一部の中成薬には安全性に問題があります*5。ですが、効く人は効くようです。
  • これとは別に、健康茶というものがあります。これは、ハブ茶ドクダミ茶のように、煎じるのではなく、すでに沸騰したお湯に生薬を浸して成分を抽出するものです(この抽出法を「煎じ」に対して「振り出し」と呼びます)。健康茶は、法的には食品に分類されているものがほとんどです。緑茶やハーブティーと同じ扱いになります。薬効は強いものもあれば弱いものもあります。日常的にお茶のように飲んでもらえればよいと思います。
  • 「中将湯」(ツムラ)、「反魂丹」(富山県各社)、「百草丸」(長野県各社)、「陀羅尼助」(奈良県各社)、「奇應丸」(樋屋製薬など)、「宇津救命丸」、「七ふく」、「養命酒」、「正露丸」(大幸薬品など)、「救心」、「太田胃散」など、漢方薬に近い扱いをされている有名な生薬製剤があります。これらは各社・各地方オリジナルのものであり、通常は民間薬と呼ばれますが、漢方薬に極めて近い医薬品だと思われます。

*1:正確に言えば「中成薬」は「漢方薬」ではありません。「漢方薬」という用語は日本独自の言葉で、中国では生薬による医薬品のことを「中薬」と呼びます。しかし、日本では「中成薬」も「漢方薬」という通称で販売されていることが多いので、この記事では漢方薬の一種として扱いました

*2:「医療用」とは、医師が処方箋を出して、それに基づいて調剤される医薬品のことを指します

*3:ツムラの医療用漢方エキス製剤には全て番号が付いている。そのため、医療関係者が処方名ではなく「ツムラの○番」と呼ぶことがある。たとえば、六君子湯であれば「ツムラの43番」と呼ばれる

*4:「一般用」とは、医師の処方箋が不要で、薬店薬局で客が自由に購入することができる医薬品のことを指します

*5:たとえば、イスクラという輸入業者のものは一定の安全性が確保されています。イスクラによる中成薬の説明のページはとてもわかりやすいのでご参考にどうぞ。