手指消毒用スプレーの自作法(簡易版)

新型インフルエンザの流行に伴い、手指消毒用の消毒薬が飛ぶように売れている。スプレー式、ジェル式のものはほとんど売り切れてしまい、ボトルに入った消毒薬しか残っていないことも多い。そこで、ここでは、ボトルの消毒薬からスプレーを自作する方法を紹介する。実は、飲用のアルコールで消毒用スプレーを作ることもできるのだ。空のスプレーは100円ショップなどで売られているのでそれを購入すればいい。また、使用し終わった寝癖直しスプレーなど洗剤以外のスプレー容器を利用してもいい。

さて、消毒薬には様々なものがあり、人間の皮膚に使用できるものと、使用できないものがある。前者の例はエタノールであり、後者の例は次亜塩素酸ナトリウムである。本稿では実用性を重視するため、手に付着したウイルスや細菌を殺すことができるものだけを挙げる。まず、最も有名なものは、エタノールであろう。お酒の成分である。そして、次に有名なのはポピドンヨード、いわゆるイソジンである。オキシドールも小さな怪我をしたときによく使われる。では、手指消毒薬を重要と思われるものから順に挙げていく。

0.基本的な注意

以下は、手洗い可能なシチュエーションを想定して書いている。手洗いができない場合は、消毒用エタノールを薄めずに使うなどの工夫をしてほしい。手洗いの方法としては、まず、消毒スプレーを手に噴霧し、よく手に刷り込む。そして、十分な時間が経ったらそれを水と石鹸でよく洗い流す。これが手洗いの原則である。手洗いの方法については各保健所などのウェブページに詳しく載っているのでそちらを参照して欲しい。

また、使用するスプレー容器は遮光性のあるものが望ましい(特に消毒用イソプロパノールを使う場合)。そして、誤用を防ぐために、必ず中身をマジック等で記入すること(例;赤字で「消毒液」と書く)。ガムテープやビニールテープに書いて貼り付けてもよい。

1.消毒用エタノール(500mL1000円程度)

75%〜80%のものが一般的に売られている。約77%の濃度のものが最も殺菌力が強いと言われている。この濃度のエタノールは引火性が強い。また、肌に対する刺激も強く、傷のある部位には使用できない。エタノールに火がつくと大変なので、ボトルからスプレー容器に移すとき、また、実際に使用するときは、火気に気をつけて欲しい。煙草の火が引火して火傷を負うこともある。肌が弱く刺激が強い場合は、水道水で薄めても構わない。消毒用エタノール100mLに対して、水20mL〜40mLを加える。こうすると約60%〜50%ができる。薄めたものは、殺菌力は劣るが皮膚への刺激が弱く、また引火性も低くなる。これは食器の消毒などにも使えるので、キッチンで使用する場合は、薄めたほうがいいかもしれない。

2.無水エタノール(500mL1400円程度)

99%のエタノールである。消毒用エタノールよりも値段が高く、必ず薄めて使う必要がある(毒性、引火性、殺菌力のため)。基本的に消毒用エタノールをオススメするが、無水エタノールしか在庫がない場合もあるので、説明する。無水エタノールは極めて引火性が強い。無水エタノールに火がついて重いやけどを負った人もいる。絶対に火気のあるところで使ってはいけない。また、換気にも注意して欲しい。揮発性が高く室内にエタノールが広がることもあるので、窓を開けたり換気扇を回した状態で作業をして欲しい。薄め方であるが、通常の水道水を用いればよい。無水エタノール100mLに対し、水30mLで77%となり、消毒用エタノールと同じ濃度になる。刺激性や引火性を弱めるためには、加える水の量を50mL〜70mLにすればよい。

3.消毒用イソプロパノール(500mL350円程度)

エタノールと同様にアルコール類であるが、いわゆるお酒の成分とは異なる。エタノールよりも毒性が強いが、酒税相当の税金がかからないので、非常に安く医療現場でよく使用される。基本的な性質はエタノールと同じである。傷のある部位には使用してはいけない。また、決して口にしてはいけない。50%〜70%のものが売られているが、肌に対する刺激が強いので薄めて構わない。イソプロパノール100mLに対し、30〜60mLの水道水を加える。

4.ポピドンヨード

いわゆるイソジンである。ヨードチンキ(赤チン)よりも温和で、粘膜や創傷部位にも使用可能である。殺菌力はエタノールやイソプロパノールよりも劣る。皮膚にはやさしいが、色素が沈着することがある。必ず1分以上は手に付け続ける必要がある。希釈せず用いる。

5.オキシドール

傷のある部位に使用できるが、殺菌力はエタノールやイソプロパノールよりも劣る。肌が弱い人はこれらを用いても構わないが、効果は薄くなる。薬局に売られていることは多いので入手は比較的容易である。希釈せず用いる。

6.塩化ベンザルコニウム・塩化ベンゼトニウム

ウェルパスやマキロンといった商品名で売られる、非常にポピュラーな消毒薬である。逆性石鹸の一種である。これは細菌には有効だが、ウイルスには無効の場合がある。ウエルパスはインフルエンザの有効であるが、ほかの商品についてはわからない。

7.蒸留酒(ウォッカ、ジン)

エタノールやイソプロパノールが手に入らない場合は、ウォッカやジンを用いてもよい。実は消毒用エタノールよりも安上がりなので、個人的には最もオススメである。これらは食品なので基本的に安全である。たくさんの酒類が存在するが、私はウォッカかジンをオススメする。理由はこれらは蒸留酒であり、エタノールと水以外の成分がほとんど存在しないからである。購入する場合は、ギルビーなどできるだけ安いものを買うとよい。非常に高い濃度のものも売られているが、たいていは、40%程度のものと50%程度のものが多い。それほど値段は変わらないので、50%のほうを選ぶとよい。これは、消毒用エタノール100mLに、水40mLを加えたものとほぼ同じ濃度である。40%でも構わないが殺菌力は落ちる。火気に注意しながら、ボトルからスプレー容器に移し、手に吹きかけるとよい。